笠原研究室の研究紹介


研究課題


1. 大気エアロゾル粒子の特性化

 大気中には様々な粒子状物質が存在するが,これらは地域的な公害問題だけでなく,地球規模での環境問題と密接に関連している。これらの問題の解明ならびに環境へのインパクトの評価を行うためには,エアロゾル粒子の濃度,粒度分布,化学組成などの特性を把握しておくことが必要である。本研究では,大気エアロゾル粒子の諸特性を,超微量多元素同時分析法であるPIXE(Particle Induced X-ray Emission, 荷電粒子励起X線)法やイオンクロマトグラフィーを応用して解析している。図は大気エアロゾルのPIXEスペクトルと解析結果の一例であり,粒子の発生源解析や地球環境への影響を評価する上で重要なデータを提供している。

2. 酸性物質の長距離輸送モデルの開発と酸性沈着機構の解明

 化石燃料の消費に伴って発生する硫黄酸化物や窒素酸化物は,大気中を輸送される過程で変質を受けエアロゾル粒子となり,直接または雲,降水に取り込まれて地上に沈着する。これらの酸性物質の沈着による環境への影響評価のためには酸性物質の発生,輸送ならびにそれに伴う物理・化学的変質過程を数値モデルにより解析する手法が有効である。本研究では東アジア地域を対象とした人為・自然発生源からの酸性物質排出量の推計,長距離大気輸送モデルの開発を行ない,地域別酸性物質の沈着量の推定を行っている。また酸性ガスやエアロゾル粒子の沈着機構の解明を目的として,実環境中試料の化学成分分析や降雨洗浄モデルの開発も行っている。

3. エネルギーシステムにおける環境負荷評価

 物質の真の環境負荷,影響を評価するためには物質の生産,消費から廃棄までの全工程について定量化するライフサイクルアセスメント(LCA)の手法が有効である。そこで本研究では,エネルギーシステムのライフサイクルから見た環境負荷評価の際の基礎データとなるインベントリーデータの整備と産業連関分析の応用について検討を行っている。また廃棄物の処理・処分におけるエネルギー効率,環境負荷の評価を行い,最適な廃棄物処理・処分システムについての検討も行っている。さらに,エネルギー使用量削減と環境負荷低減を考慮に入れた新しいライフスタイルの提言を目的として,その基礎となるデータの収集も行っている。