津野研究室の研究紹介


研究課題


1. 生態系での物質の移行・変換・濃縮機構の数理モデル化に関する研究

 水域、土壌および生物学的反応器における生態系数理モデルの開発研究を展開している。これにより環境中や生物学的反応器中での有害物質の移行・変換・濃縮過程の予知や機構解明が可能となり、有害物質による生態系への影響評価、現状の水質の評価、将来の水質の状況把握、水質制御方策や環境政策の効果の検討、反応器の設計操作因子の検討などへの適用を試みている。また、酸性雨による森林土壌からの有害物質溶出機構のモデル化も研究しており、酸性雨による土壌や水域への長期的な影響の予知も試みられている。

2. 高度排水処理のための生物学的反応器の開発研究

 廃水から有害物質を除去し生態系での循環機構に組み入れることは有害物質による環境汚染の防止の手段の一つとして重要である。このため、放流水の水質基準は、項目的にも水質レベルデモより厳しくなっている。これを満足するために栄養塩や有機化学物質の除去を目的とする生物学的変換機構を活用した効果的な反応器を開発研究している。生物学的変換機構をより効果的に活用するために物理・化学的機能を有する活性担体を生物付着担体として用いた生物膜反応器もこの研究で焦点を当てているものの一つである。また、廃水からのエネルギーや資源回収技術の開発にも積極的に取り組んでいる。

3. 環境微量汚染物質の測定に関する研究

 急性影響のみばかりでなく、変異原生や遺伝毒性といった長期的な影響の観点から、有機塩素化合物等の化学物質や農薬といった環境微量汚染物質や重金属等の有害元素の、生態系を通しての環境中での運命が注目されている。また、これらの物質の発生源や負荷量、流出・流達機構の解明も重要である。これらに関する研究を展開するには、環境中で微量で存在する環境微量汚染物質や有害元素の測定が不可欠であり、濃縮手法、高度分析手法及び形態分析の技術開発を試みている。分析手法としてはGC/MS、LC/MS、ICP、ICP/MS、ESCA、X-ray-FS、ESR、ICなどの高度分析機器を活用している。

4. オゾン酸化の機構解明と技術開発に関する研究

 オゾンは自然界に存在する強力な酸化剤であり、消毒、脱色、脱臭、有機物酸化、THM先駆物質の除去などの目的で、積極的な活用が期待されている。しかしながら、それら各反応の機構や副生成物の解明は、オゾンの効果的な活用にあたっては重要となる。オゾン酸化処理に加えて、オゾンと過酸化水素や紫外線照射とを組み合わせ、OHラジカルの酸化反応も活用する促進酸化法も注目されている。オゾン酸化法および促進酸化法の適用技術の開発を試みるとともに、これら各法を酸化分解の観点から比較検討し酸化分解機構の解明を試みる。また、酸化分解過程での臭素酸イオンを含む種々の副生成物や他の酸化性イオンの測定法の開発とそれらの挙動に関する研究を展開している。