松井研究室の研究紹介


研究課題


1.新規環境中毒性物質の同定とその毒性メカニズムの解明

 重金属、有機塩素化合物、PCB、ダイオキシンなど悪名高い汚染物質の研究は盛んに行われている。しかし、バイオアッセイを用いて環境中の毒性物質を検索してみると、環境中には未知の毒性物質が多種類存在することがわかってきた。しかも環境負荷への寄与率を計算すると、既知の毒性物質よりもはるかに重要な物質が存在することがわかってきた。本研究では、未知の環境中毒性物質を様々な分離方法とバイオアッセイを駆使して同定し、その毒性メカニズムを、最新の分子生物学的手法で解明する。

2.持続的食糧生産を可能にする尿リサイクル法の開発

 人間のし尿を農地に還元する文化は世界中で散見され、日本の江戸時代には極めて洗練されたシステムが出来上がった。これは、窒素、リン、カリウムのリサイクルと、水質汚染防止を同時に達成する巧妙な仕組みであった。戦後日本は下水道整備という道を選択したので、このシステムは急速に崩壊した。水質汚染問題とはつまるところし尿処理の問題なのである。我々の研究室では、尿を糞便と分離し、これから様々な資源を回収する方法を提案している。すでに尿から肥効が持続する緩効性肥料を作成するプロセスの開発を行っている。また、昨年度我々は、人間の尿中からがん細胞の増殖を抑制する物質を単離同定した。尿は生理活性物質の宝庫であり、様々な有用物質を抽出するプロセスを考えることもできる。言い換えれば、尿は人あるところに必ず存在する偏在のない資源なのである。

3.有機性一般廃棄物の炭化による有機物循環利用戦略に関する研究

 我が国の供給熱量ベースでの食料自給率は40%台であり、我々が口にする物の大半は海外から輸入されている。一部は代謝を通じて放散されるが、その大半が国土に蓄積する。この蓄積分の処理処分が大きな問題になっており、再資源化策の切り札としてコンポスト化について研究がなされているが、その受け入れ先がないのが現状である。有機性一般廃棄物を分別収集し炭化処理を行い、下水の高度処理の際の活性炭としての活用や燃料としての利用も考慮に入れ、CO2対策の一面も持たせつつ、我が国の資源循環利用策のひとつとして位置づけた際の可能性について探求する。

4.一般廃棄物収集運搬ルート探索のための支援システムの開発

 一般廃棄物の収集運搬に要する費用は、自治体によっては、一般廃棄物処理処分事業に要する費用の7〜8割を占めている例もあり、財政の硬直化を招いている。一般廃棄物の収集運搬に関する研究を継続して行っており、効率的収集巡回ルートを計算するため、遺伝的アルゴリズムを用いた対話型アプリケーションの開発を行っている。探索問題は、環境対策など代替案の選定時などにも役立つため、本システムの別問題への実行可能性についても追究を行う。