内山研究室の研究紹介


研究課題


化学物質に関するリスク評価

1. 有害化学物質のリスク評価手法の開発

 難分解性で,蓄積性のある有害化学物質のリスク評価手法を確立するには,有害化学物質の人への曝露経路と曝露量並びにその摂取量の推定が重要であります.曝露経路は,気圏,水圏,地圏,生物圏と多岐にわたるために,総合的な曝露メカニズムの解明が必要となります。これらの研究に基づいて,時代とともに変化する有害化学物質の各媒体間の挙動を解明するとともに,リスク評価に必要な人への生涯曝露量,食物を含めた摂取量を推定する方法を研究しています。

2. 大気汚染物質の健康影響に関する研究

 最近のわが国の大気汚染は屋外では窒素酸化物や道路沿道でのディーゼル排気粒子など,屋内では建材や家具,喫煙などによる化学物質の健康影響が問題となっています。私たちは,特にディーゼル排気粒子に付着する多環芳香族炭化水素を指標とした個人曝露濃度の評価と呼吸器系,循環器疾患系への健康影響との関連を研究しています。また屋内汚染では,受動喫煙を防止するための分煙効果判定基準に基づいた測定や,より効果的な分煙方法について研究しています。その他,地球温暖化に伴う大気環境の変化と健康との関連,酸性雨原因物質の抑制に伴う健康の改善などについてタイや中国と共同研究を行っています。

3. 有害化学物質曝露についての生物学的モニタリング手法の検討

 近年,日常生活の中で,屋内外で曝露される様々な微量の化学物質による健康影響が問題になっています。これらの健康リスクを評価するリスクアセスメントにおいて,曝露評価は重要なステップの一つです。しかし,これまでは生体内の濃度が微量で,測定が難しかったために,環境中の濃度を測定するにとどまっていました。本研究では,特にベンゼン,トルエンなどの揮発性有機化合物について,人の尿や血液中の微量な濃度を測定する手法を開発し,個人が,生活の中で実際にどのような物質にどの程度曝露されているのかを明らかにする生物学的なモ ニタリング手法について研究を行っています。

音環境に関する研究

4. 騒音と振動に関する苦情の訴えがある地域での社会調査

 騒音・振動に関する苦情の訴えが,未だに数多く見うけられます。そこで,騒音・振動に関する苦情の訴えのある地域を対象にアンケート調査を行います。アンケート調査の後,各住居を対象に騒音測定および振動測定を行って実態を明らかにします。騒音・振動測定の結果とアンケート調査の結果の対応より,騒音・振動の物理量と住民の心理的影響の関係について検討しています。

5. 音環境の快適性と脳波および自律神経の関連について

 音環境が人間の生理反応(脳波,心電図,発汗,血圧,血流量etc)に及ぼす影響を明らかにすることを目的として実験を行います。被験者に様々な音を聞いてもらいながら生理反応の測定を行います。同時に音の快適性についても評価してもらいます。その結果より,人間の脳波や自律神経機能の変化に関する評価等を用いて音環境の快適性を定量化することを試みています。さらに,実験室ではなく実際に屋外でも同様の実験を試みています。