工藤研究室の研究紹介


研究課題


1. 極微量環境中元素(放射能)分析法の開発と環境調査

 環境中に残る過去の核実験のフォールアウト等の放射能濃度は極めて低いが、様々な環境中の放射能を測定することで、実際の自然環境における放射能の移行を知ることができる。本研究課題では、アルファ線スペクトロメトリー、低バックグランドガンマ線測定、誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)等による環境試料中の微量放射能(元素)分析方法を検討し、これを適用して、地下および地上環境での極微量のプルトニウム・ネプツニウム・ウラン等のアクチニド系列元素、放射性セシウム等の環境動態を検討してきている。例えば、図1に示すのは、北極における環境調査から、長崎原爆によるものを含め過去511回にのぼる大気中核実験に由来する放射能(239Pu, 137Cs)(図1)の降下履歴を解明した結果である。

2. 地層処分を想定した還元性環境下でのプルトニウムの挙動の実験的研究

 放射性廃棄物の地層処分場の建設される深地下の還元性環境下でのプルトニウム等の放射能の移行挙動は、処分場の安全性を大きく左右する。本課題では、深地下に生棲する硫酸還元菌(図2)等の微生物とプルトニウム等の相互作用を実験的に検討している。

3. 北極アイスコアを利用した地球規模気候変動の研究

 過去8000年間の人類の繁栄を支えてきた気候の安定は、それ以前の大きな気候変動の歴史からすれば偶然の産物にすぎないことが、1994年 度欧米のグリーンランド・アイスコア研究から明らかになっている。本課題では、火山噴火に誘発される気候変動に焦点をあて、北極アイスコア中の粒子状物質をICP−MS等の極微量分析装置で分析し、火山灰降下量と気候変動の相関を定量的に明らかにすることをめざす。

4. 水俣湾から八代海周辺海域の水銀の挙動

 当研究室では、20年間にわたる長崎大学との共同研究で八代海における底泥採取と水銀の分析を行い、水俣湾の水銀は湾外に約20kmにわたり拡散していることを明らかにしてきた。また、最近の堆積物コアの採取・分析結果から、 1) 水銀の他にも水俣湾より流出した汚染元素のあること、 2) 水銀の湾外への流出は水銀を含む工場廃水の排出から相当長い時間が経過してから始まったこと、等が明らかになりつつある。