西牧研究室の研究紹介


研究課題


1. 有害汚染物質の土壌中における動態とその評価 -土壌中存在形態の影響と評価-

 清掃工場より放出される重金属やダイオキシンのような降下汚染物質の大部分は、地表付近に保持され、その後ゆっくりと土壌中を下方へ移動する。このときの水分および物質の挙動を詳細に追跡することにより、有害物質の移動や土壌への収着機構を解明し、生態系(人間)への影響を評価することが可能である。特に、土壌中有害物質として希土類元素や放射性核種に注目し、土壌中の分布と挙動を実験的に観察する。また、実験結果と数学モデルによる計算結果を比較することにより、土壌中での放射性核種や有害無機物質の挙動の評価と挙動予測モデルの構築も試みる。

2. 核燃料サイクルから発生する炭素14の挙動とその処理法に関する研究

 原子力発電所などの核燃料サイクルから発生する炭素14は、現在のところ宇宙線起源のものや、核実験起源のものに比べて微量であり、また弱β線放出核種であるために放射線安全上重要な核種であると認識されていなかった。しかし、炭素14は半減期が長いため環境中に長くとどまり、長期にわたって被曝源となる。このため、原子力利用のシナリオの中には炭素14が最大の集団被曝源の核種であるとするものもあり、炭素14による影響について十分に検討する必要がある。このような観点から核燃料サイクルより発生する炭素14の発生源、発生量を調査し、発生した炭素14の物理的・化学的挙動について検討を加え、有効な処理法を確立するとともに、その固形化や処分に関する工学的方法について検討し、炭素14の影響と被曝低減対策について総合的に研究する。

3. 環境中放射能モニタリングと被曝線量評価に関する研究

 原子力施設から環境中に放出される放射能について、低レベル放射能の測定法を開発するとともに、環境中における放射能濃度を短期的・長期的に観測し、原子力運転の平常運転がもたらしている環境影響を明らかにする。
 具体的には、Ge半導体測定器による低レベルγ線分析法の開発、携帯型スペクトロメーターによる野外測定法の開発、原子力施設周辺の環境モニタリング、およびそれらのデータに基づく被曝線量評価などの課題に取り組む。

4. 原子力施設大規模事故にともなう放射能汚染と災害評価に関する研究

 原発等の原子力施設において大規模な放射能放出を伴う事故が発生した場合の影響を、 さまざまな放射能放出モード、気象条件下でシミュレーションし、周辺地域での放射能汚染や被曝線量の評価を行う。
 また、旧ソ連チェルノブイリ原発事故や米国スリーマイル島原発事故など、実際に大規模な放射能放出を伴った原子力施設事故について、文献データの収集や独自の測定などを基に放射能汚染の解析を行い、災害規模の評価を試みる。