森澤研究室の研究紹介


研究課題


1. 微量汚染物質の地球環境での挙動と健康リスク評価

 農薬等の化学物質、核実験で放出された放射性各種などの微量汚染物質は、長期かつ低レベルの被爆を人類にもたらし、様々な健康リスクの原因となる。本研究では環境中におけるこれらの動的挙動を解析して、食糧の経口摂取などによる潜在的健康リスクを評価するための地球規模リスク評価モデルを開発し、地球環境モニタリングデータを用いてこれを検証する。また、各種化学物質やアンチモンなどの重金属について、フィールド調査により汚染実態を把握すると共に、地球規模・生態系規模でのリスク評価モデルの開発やシミュレーションも行う。


地球レベルリスク評価
(環境放射能モニタリングネットワーク)
2. 化学物質の人体中での有害性発現機構の解析とリスク評価

 環境中の化学物質による人の健康リスクを評価するためには、人体中での有害性発現機構を明らかにする必要がある。本研究では生体中での代謝を考慮した生理学的薬動態学モデルを開発し、これら化学物質とその代謝物質の各臓器への移行集積過程を把握し、人の発ガンリスクなどを動物実験データなどから精度良く推定する方法を確立する。また遺伝子に突然変異を引き起こす物質(環境変異原)を、マウス細胞などを用いて検出する方法を、遺伝子工学の手法を用いて開発する。さらに様々な物質によるDNA突然変異を解析し、環境変異原を同定すると共に、リスク評価のための基礎データを収集する。


地球・生態系レベルリスク評価
(農薬の環境内分布と人への曝露評価)

生態レベルリスク評価
(ベンゼンの生体内代謝)
3. 環境汚染モニタリング地点の最適配置手法の確立

 環境汚染の現状を把握するには対象となる物質、対象とするスケールごとに最適なモニタリング方法を選択する必要がある。実際に採用されるモニタリング地点数は、必要とされる精度と経済性との兼ね合いによって決定され、結果として得られる汚染物質濃度の分布などにはある程度の不確実性がつきまとう。本研究では確率論的シミュレーション手法と、遺伝アルゴリズムによる最適化手法を用いて、情報の不確実性と経済性などの制約の下で最適なモニタリング戦略を決定する方法を確立し、実フィールドでの環境汚染物質のモニタリングに適用する。


遺伝子レベルリスク評価
(遺伝子突然変異位置の解析)

情報収集の最適化
(情報量の増加と共に濃度分布が確定していく様子)
4. 地表水と地下水の循環およびその水質悪化

 近年、浅層地下水は地表からの様々な汚染物質、たとえば有機溶剤や硝酸性窒素などで汚染されている。このような地下水汚染源の一つとして、都市域を流れる水質の悪化した河川がある。本研究では主として京都盆地を対象として、地下水の流れと地下水質の分布をフィールド調査と数値シミュレーションによって評価し、地下水と地表水の循環に由来する地下水質悪化現象とその機構を示すと共に、同現象を制御予防するための対策を提案する。またGISデータを用いて、様々な地域における地下水流をシミュレートする方法や、地下水の汚染のしやすさを評価する方法を開発する。


水質悪化機構の解析
(京都桂川周辺地下水中電導度分布)