津野研究室の研究紹介


研究課題


1. 都市廃棄物・廃水処理

 廃水や廃棄物を資源あるいは資源材料として取り扱い、都市や地域内で資源を循環利用することをコンセプトに、生ゴミを下水道で収集しエネルギーと資源を回収する一元化システムを、21世紀の新たな都市基盤施設として確立することを目指して、その要素技術である効率的・省エネルギー型高度処理技術、高温高負荷嫌気性発酵技術、汚泥発生抑制・燐回収技術などの開発研究を行っている。

1-1. 生物膜ろ過反応器による下水再利用技術の開発研究
 コンパクトで維持管理の容易な下水の高度処理技術として、生物膜ろ過反応器の開発を試みる。ろ過といった物理学的効果とともにろ床表面に付着増殖した生物膜の変換機構をも活用するものであり、従来の生物学的反応器より、省スペースで高度の処理が期待され、下水の水資源化が図れる。

1-2. 嫌気性発酵技術の開発研究
  生ゴミ等の有機酸発酵・メタン発酵を行う技術開発を行う。メタンはガスエンジン等で電気と熱の生成に利用される。55℃という高温で、従来より10倍程度の高負荷(高速)での発酵を目指している。

1-3. 汚泥発生抑制・燐回収技術の開発研究
 今世紀中に枯渇すると予測されている燐を結晶状物質として下水中から回収するとともに、下水処理過程で発生する余剰汚泥量を削減する技術を開発している。そのために、生物学的燐除去、オゾン処理、結晶生成の技術を統合して用いている。

2. 化学酸化処理

 消毒・有害化学物質の無機化などの目的で、オゾン処理が研究されており、近年では水の処理や再利用にも活用されつつある。しかし、水中に含まれている物質とオゾンとの反応により、有害性を有する副生成物の生成が懸念される。そこで本研究では、副生成物についての検討を、様々な角度から試みている。

2-1.バイオアッセイ法によるオゾン処理副生成物の評価
 オゾン処理の副生成物の中で、雄の雌化に関与するエストロゲン性物質および変異原性物質に注目する。そして、それらの物質に対する安全性評価を行うためバイオアッセイ法(生物学的試験法)を確立しつつ、効率的で安全なシステムの構築を試みている。

2-2. 機器分析によるオゾン処理副生成物の検討
 副生成物の生成を最小化しながら、疫学的安全性や副生成物の制御のための操作因子を求めるのが重要である。本研究では、副生成物として発ガンの可能性が高い臭素酸や遺伝毒性、変異原性などの原因と考えられるアルデヒドなどについて、機器分析法を確立しながら、操作条件を検討している。

2-3. 電気分解
 コンパクトな水処理システムの構築を目指し、電気化学的手法による下水のCOD除去技術を開発している。この手法は、下水に電気をかけ、電極表面での有機物の直接酸化、および生成した次亜塩素酸を酸化剤とした間接酸化を原理とする。また、別にオゾン曝気を併用することにより、より強力な酸化剤が生成されることが期待されている。

3. 水質汚濁機構の解明

 人間の活動に伴って種々の有害物質が環境に排出され、それらは環境中で輸送され変換され、また生態系を通じて濃縮され、我々人間の生存の基盤である生態系に甚大な悪影響を及ぼす。特に、微量であっても直接的に生物に悪影響を及ぼす、あるいは環境中で蓄積され生態系を通じて濃縮され長期的な悪影響を及ぼす環境微量汚染物質による環境汚染の防止は重要である。これら汚染物質の人間活動等に伴う発生機構、環境中での輸送・変換機構、生態系での移行・濃縮機構および環境影響についての研究を推進している。

3-1. 湖沼・河川の汚濁機構解明
 湖沼や河川で現地調査を行いながら、汚濁機構や富栄養化対策についてを研究している。水質分析手法としては、GC/MS、LC/MS、ICP、ICP/MS、ESCA、X-ray-FS、ESR、ICなどの高度分析機器も活用している。また、世界各地の湖沼に幅広く適用可能な、汎用型生態数理モデルの開発を試みている。

3-2. 生物モニタリング
 ポリ塩化ビニル(PCB)などの残留性有機汚染物質(POPs)について、生態系を通じた生体への濃縮過程や濃縮率などの濃縮機構の解明および生物モニタリング技術の開発のために、本研究を展開している。そのために、大阪湾や播磨灘でのムラサキイガイ中の有害化学物質の定性的・定量的測定法を開発し、また一年間でのムラサキイガイの成長過程での濃縮状況把握、濃縮量と環境条件などとの関係について解析を試みている。

3-3. 酸性雨
 酸性雨によっての森林土壌からの有害物質の溶出も将来は重要な問題と考えられる。酸性雨による森林土壌からの有害物質溶出機構のモデル化を研究しており、酸性雨による土壌や水域への長期的な影響の予知を試みている。