環境衛生学分野では,人の健康を維持増進するために,人間と人間をとりまく環境との相互関係を明らかにし,健康被害を未然に防止することが研究の主たる方針であります。例えば,環境中に放出された浮遊粒子状物質,環境ホルモンやダイオキシン類に代表される有害化学物質は多方面にわたって人体や環境に悪影響をもたらしています。また,社会の高度化に伴い騒音問題が深刻化しています。これらの諸問題に対してリスクを評価するには,環境影響因子について十分な情報を収集し,安全性を評価することが必要になります。しかし,現在流通し,使用されている化学物質でさえ未だ安全性の評価が行われず,人体や環境への影響の大きさが判明していないものが多く残されています。騒音の心理的,生理的影響および聴力への影響についても多くは未解明であります。
また,リスクを評価するには,現状の環境濃度や曝露量の推定が重要であります。人への曝露経路は気圏,水圏,地圏,生物圏と多岐にわたる挙動の解明が必要になります。さらに,曝露量とその影響について量的な関係を見いだすことも必要になります。以上のような研究を実施してリスクを評価する手法を確立し,人の健康被害を未然に防止することを目標としています。