京都大学 工学部地球工学科 環境工学コース Undergraduate Course Program of Environmental Engineering
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桂キャンパス 大気・熱環境工学 COURSE KEYWORD:地球温暖化,気候変動,大気汚染 

地球温暖化抑制を目指し、社会・経済活動モデルや大気・地球気候モデルを駆使して、有効な温室効果ガスの排出削減策と夢のある未来社会像への道筋を描きます。

地球と人が一緒に生きていく道を探るSupport the living, To be in harmony with the environment
  • 環境統合評価モデルの開発環境統合評価モデルの開発
  • 産業および家庭からの環境負荷の発生とその抑制方策に関する研究産業および家庭からの環境負荷の発生とその抑制方策に関する研究
  • 低炭素社会を支える都市・地方シナリオの開発低炭素社会を支える都市・地方シナリオの開発
  • 環境変化に関わる地球規模物質循環および地球環境変化の人間・社会影響に関するシミュレーション環境変化に関わる地球規模物質循環および地球環境変化の人間・社会影響に関するシミュレーション

社会・経済活動に伴い、二酸化炭素、亜硫酸ガス、ばいじんなどが環境中に放出されます。これらの物質は、周囲や地球全体に影響や損害を与えます。こうした問題に対処するためには、人口都市化、経済発展、エネルギー消費等の事象と汚染物の排出、その環境への影響等の事象を一連のものとして統合的に把握し、効果的かつ予見的な対策を実施していく必要があります。
近年、統合評価モデル(Integrated Assessment Model, IAM)がこうした問題に対応するための必須的なツール(道具)とみなされるようになってきました。この研究室では1990年頃から国立環境研究所と共同して地球温暖化に関する統合評価モデル(アジア太平洋統合評価モデル、AIM)の開発を行っています。図1はこのモデルのフレームを描いたものです。この活動は現在でも活発に行われています。今後100年間の地球環境をめぐる様々な問題、例えば途上国大気環境問題、土地利用改変問題、地球規模水資源問題などについて、より包括的な視野から検討することを目指しています。また、開始時からこの研究は、中国エネルギー研究所、インド経営大学院、AIT、ソウル大学等と共同で遂行しており、これら各国への適用や情報収集のため、頻繁な交流を行っております。
このモデルは気候変動に関する政府間パネル(IPCC)、地球環境アウトルック(GEO4)、ミレニアム・エコシステム・アセスメント(MA)など、地球環境問題に関する国際的評価作業の主要モデルとして使用されています。

この領域の研究では、(1)産業や家庭における資源使用、廃棄物発生あるいはエネルギー消費行動や、(2)それらを抑制するキーテクノロジーの展開、(3)それらの営みとマクロ経済との関連性、を数理的方法でモデル化し、それらを使用し環境施策の展開や、環境技術の評価と進展に係わる諸問題を検討しています。
具体的には、社会経済システム内の物質収支・変換を表現するモデルを、経済学で発展した応用一般均衡モデル、計量経済モデル及び社会会計などの諸手法とマス・バランス、エネルギーバランスなどのシステム工学的な考え方を土台にして、家庭における消費選好や財の使用・廃棄のメカニズムや、産業生産工程の工学技術的表現に基づいた物質収支・環境負荷発生とそれらを抑制する方策など、を統合して開発しています。これらの内容はいずれも、循環型社会のデザインを行うには必要不可欠な要素です(図2)。
また、本研究室では、こうしたモデルを検討道具として、(1)家計消費行動及び企業生産活動における経済的、時間的、制度的制約条件の変化と、技術・社会イノベーションの進展の絡み合いをいかに表現するか、(2)それらをどのように組み合わせれば、今後50年間に予想される地球温暖化や資源枯渇などの制約を克服できる経路を描けるか、の二点に向けて、研究勢力を集中しております。これらの研究に関連して開発したモデルにAIM/enduseと称するものがありますが、このモデルはCOP3の際のわが国における二酸化炭素削減目標の論争や、最近の低炭素社会構築プロジェクトなどの中心的ツールとして使用されています。

二酸化炭素の排出は都市構造や交通等、人間の日常生活の基盤である地域社会の状態と密接に関係しています。そのため、低炭素社会の構築においては地域社会を作る役割を担う地方自治体レベルでの対策を講じることが必要です。将来社会においては人々の価値観やそれに伴う社会経済構造はいくつも想定されます。地球温暖化問題のような中長期的な目標、対策を要する問題に対しては、いくつかの異なる将来の道筋を想定し、意思決定に役立てる手法であるシナリオ・アプローチが有効です。そこで、この課題では、地域・都市レベルを対象とし、社会・経済活動全体から排出する温室効果ガス量を推計するとともに、今後20-30年の間にそれらの大幅削減を満たし、かつ活力ある社会(低炭素社会)を実現するために必要な対応策をデザインします。また、実行可能かつ定量的な施策のロードマップを提示し、地方・都市レベルでの低炭素社会構築に向けた検討の支援を行っています。
具体的には、(1)将来社会の想定の下での社会経済の活動水準、(2)利用される技術の下での環境負荷の排出量、(3)環境目標を達成するために必要な対策の導入量を推計するツールExSSや、2050年までの温室効果ガス削減対策の導入・技術普及プロセスと、そのために必要な施策の導入タイミングを求めるモデルであるバックキャスティングモデルを開発しています。図3は、ExSSの構造を表したものです。これらのツールを滋賀県、京都市、マレーシアのイスカンダール地方などを対象に適用し、対策の検討及びロードマップの構築を行っています。

大気に排出された汚染物質は、排出源近くの大気汚染を引き起こすとともに、隣国や場合によっては世界全域に影響を及ぼします。大気流動、降水、化学変化を考慮した汚染物質の輸送や変化、汚染に伴う健康影響や経済影響の評価、被害を回避するための排出量抑制対策などの検討などが必要となりますが、当研究室では社会・経済データベースや地理情報システムを駆使した計算機シミュレーションによって、大陸規模にわたる環境汚染物質の排出、輸送と変化などを定量化するとともに、政策シナリオを設定し将来推計を行っています。

松岡譲教授 Professor Yuzuru Matsuoka
在学生の声『将来予測で地球環境問題の解決に貢献』
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